反対討論の全文

日本共産党の須増伸子です。
 私は,議案3件,発議1件,請願1件、陳情11件について,委員長の報告のとおりに決することに反対する立場でその理由を述べます。
 まず,議第1号令和4年度岡山県一般会計予算です。
産業振興について、大規模企業立地促進補助金のうち単県予算で24億3千万円、特に大型投資・拠点化促進補助金が4億8千万円増額など、大型設備投資ができる体力のある企業に支援するありかたを根本的に見直すべきと考えます。
一方、農業政策では、農家に史上最大の減反拡大を押し付けながら、交付金予算は増やさず、「取りはがし」が国の方針で行われます。これでは、定着している転作がダメになることや、米価の暴落も重なり、そもそも農業の継続が難しいと悲鳴が上がっています。こんな状況にもかかわらず、県独自の支援はあまりに不十分と言わざるを得ません。減反拡大に伴う交付金を出すべきと考えます。
 次に政府は、デジタル改革関連法でマイナンバーの情報連携を拡大し、あらゆるデータを集積しようとしています。個人情報の集積により、個人情報漏えいの危険は高まります。今年度県はマイナンバーカードを県立図書館の利用者カードで使えるようにしましたが、利用者は 12人しかいませんでした。しかし、令和四年度予算では、各市町村の図書館でのマイナンバーカードの利用をできるように補助制度が組まれました。図書館では、何を読むかはその人のプライバシーに属することであり、利用者の図書事情を外部に漏らすことは禁じられています。全国でも実施している県は3県にとどまっています。費用対効果の面でも問題があります。岡山県でも実施すべきではないと考えます。
次に苫田ダムのあまり水への支出はすべきではないと考えます。
次に教育予算について、県独自の学力定着状況確認テストの実施や、担任を持たない授業改革推進リーダーの増員をしています。学校と子どもたちを管理と過度な競争にあおり立てる体制を改め、正規の先生を増やして、ゆき届いた教育を求めます。
 つぎに、子ども・ひとり親,障害者の岡山県医療費公費負担制度について,依然として全国の中でも低い水準に下げられたままです。子どもの医療費公費負担制度で,倉敷市に対して依然として1/4と少ないままです。精神障害者が県の心身障がい者医療費助成制度の対象外となっています。いずれも改善をすべきと考えます。
 以上の理由から,新年度予算に反対いたします。
次に、陳情第109号高等学校入学時「一人一台タブレット端末」購入を公費負担を求めることについて、採択すべきと考えます。働き盛りの世帯の年所得が25年間で100万円以上減少したと内閣府が衝撃の発表をしました。根本的には、所得を増やすための労働法制の改革も必要ですが、子育て世代の財政的な支援は、いま最も行政の優先課題と感じます。多くの県ですでに公費負担をされているタブレット端末をなぜ、岡山県では自己負担なのか。あまりに子育て世代に冷たい姿勢と言わざるを得ません。また、非課税世帯に対するタブレット貸与についても生徒間に格差が見える化されるため大問題です。先日高校合格者に配布された学校からの手紙で、貸与のものはみんなと違うのでできるだけ購入をと書かれてあったそうです。非課税世帯の経済事情を想像できない姿勢は許せません。公費負担の実施を心より願います。
次に、発議 8号 家庭教育応援条例について、反対の立場で討論します。
 条例案は、前文で「家庭教育はすべての教育の出発点」であり「愛情や絆、家族のふれあい等で、・・」「知・徳・体の調和のとれた人格を形成する」としています。
これは、家庭教育で形成すべき子どものあるべき姿を定め、条例全体として、その形に従うための努力義務を親・保護者や学校・保育機関などに求めていくものとなっています。特に、保護者の責任を強調し、自覚することを要求しています。
「今の親は問題だ」という認識のもと、根拠に乏しい教育力の低下を理由に「応援」しようという高圧的な立場でつくられた条例と感じます。
パブリックコメントでは、市町村から9件、県民から502件(276人)の意見が寄せられました。そのうち七割が反対の意見でした。市民団体から22343筆の反対署名も提出されています。子どもが「親になる選択をするようプレッシャーを感じざるを得ない」などの声や、岡山県弁護士会は「家庭教育に対する公権力の過干渉につながる」と反対声明も出されています。
理念法だからいいのでないかという議論もありました。
先行して類似している条例を制定している茨木県では、家庭教育推進室に専任の職員を8人配置し、茨城県就学前教育・家庭教育推進ビジョンを制定し「幼児期に育ってほしい子どもの姿」として、「あいさつのできる子ども 」や 「約束やルールを守ろうとする子ども」などを示し、19の市町村で、県の支援の下、区域を決めて就学前の家庭に全戸訪問を進めているとのことでした。
  私は、例えば虐待が疑われる家庭や、家庭からの求めに応じる形での家庭訪問は必要で、相談活動や適切な専門的支援を実施することはとても大切と考えています。しかし、全戸家庭訪問となると別です。全戸に一律訪問をすることは、応援の内容に違和感を感じる人や、「育ってほしい子供の姿」にはならず悩む人を追い詰め、逃げ場がなくなったり、孤立させていく可能性があります。
 特に、障害のある子どもの教育は一筋縄ではいかないことが多く親はどういうかかわり方が正しいのかわからないために、自分を責め自信を失ってしまう人も少なくありません。本来専門家の支援こそが必要です。
知・徳・体の調和がとれた人格や健やかな発達をとの特定のあるべき姿を地域で推奨していくことではなく、病気を持っていても、また発達の凸凹があっても、みんな違ってみんないいと受け止めていくことこそ大切ではないでしょうか。
 また、総務委員会(2021.12.17)の議論で、ある委員から「憲法に家庭の問題が記載されていないことは、我が国憲法最大の欠陥であると思っている。家庭は社会の基礎的な単位であり、安定的・平和的に家庭教育がなされることが、子どもたちの教育に当たっては大前提だ。むしろこの条例が出るのが遅すぎた。」との意見が出されました。憲法改正や家庭教育支援法(案)などの流れの中に、この条例があることがわかりました。個人の尊厳をかえる憲法改正はすべきではないと考えます。
 また、「親学」をするのではないのかという不安の声もありました。親学とは、「親が変われば、子ともも変わる」という考え方に基づき、 ・伝統的子育てにより発達障害は予防できるなど、「発達障害は先天的なものだ」という標準的な医学とはまったく反対の考えをもとにしていることで、障がい者団体から批判さています。
現実に他県ですが親学推進協会が自治体の委託を受けて親学を実施しているところもあるために不安が広がっています。そんな中、文教委員会での議論で「親学推進のためにこの条例を作っているわけではない」と委員長が発言されたことは重要です。
最後に私は、家庭教育について二つの点が大切と考えます。
 第一に、個人の尊厳、両性の平等、子どもの権利などの民主主義的な価値を期待しながら、家庭教育の多様性と自主性を尊重することです。多様性というのは、子育てには、正解や正しい形はなく、いろいろな家庭、いろいろな子育てがあっていいということです。自主性というのは、どんな家庭を作るのか、どんな子育てをするかは各家庭で考えていくことで、公がそのあり方を指図してはならないと思います。また、家庭はプライベートなくつろぎの場所でありそこでの子育ては学校での教育とは格段に違う自由さが必要ではないでしょうか。
第二に、政治が家庭に行うべきことは、家庭教育を支えるための条件整備あると考えます。格差と貧困が進むいますべきことは、子育てと仕事の両立のための労働条件の改善、保育園の設置、教育費や医療費などの軽減、一人親家庭の支援など「安心して子育てしていいよというメッセージの発信とそれを可能にする具体的な政策の実施です。
 以上のような理由で、家庭教育応援条例に反対します。
・最後に、なぜ提案者の自民党会派から賛成の立場からの討論がされないのか、多くの県民にかかわるものでこれだけ異論も出ており、議論が尽くされていないものもある中で、説明責任はないのでしょうか。大変残念です。
以上です。
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